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オーストラリアの学校事情に関するレポート-コロナ禍での様々な取り組み-

2020年6月24日教育コラム

新型コロナウイルスの流行で日本の教育現場は大きな影響を受けました。オンライン授業や時差通学など、ウイルスの感染拡大を防ぎながら授業を行う手段を模索しています。日本以外の国では、このコロナ禍でどのような取り組みをしているのでしょうか。

今回は、オーストラリアの教育関連マーケティング会社Aimtechでディレクターを務める宮内由紀子さんに、オーストラリアの学校事情について伺いました。

学校の現状

授業イメージ

コロナ禍の授業

NSW(ニューサウスウェールズ)州の学校では、感染防止対策として行われていた1か月以上の遠隔授業を終了した。5月11日から時差通学、短縮授業、そして週1で特定の学年だけを通学させる仕組みをとり(例:月曜日は中学1年、火曜日は中学2年のみ登校)、徐々に通常の授業に戻るように計画し、6月1日から週5日の普通の授業に戻った。

中学校以上の遠隔授業は、Microsoft TeamsやZoomが使われ、円滑に行われた。しかし、幼稚園や小学校はまだ「時間割」というものがないため授業が体系化されておらず、保護者から子供の教育が遅れるのではないかという不安の声があった。

説明会やPTAもオンライン開催

高校での説明会や保護者向けのセミナー、小・中・高等学校のPTA会は、コロナウイルス感染拡大防止のため現在オンラインで開催している。PTA会などは通常の対面での開催よりもオンライン開催の方が参加者が多いようだ。

大学開催の高校生向け説明会

シドニーの大学は高校生向けの説明会を頻繁に行っている。コロナウイルスが流行してから、説明会はオンライン開催になった。大学生活に関して、奨学金に関して、就職やキャリアに関してなど広範囲の内容で、興味のある話題の時間帯を選んで参加できる。

高校生も大学のコンピューターサイエンスの授業が受けられる

シドニー大学 とNSW州大学 (University of NSW) は、高校生にコンピューターサイエンスのコースを提供している。受講した高校生は、1学期間、シドニー大学の場合は毎週オンラインのみの講義に参加する。NSW州大学は毎週オンライン講義と大学でのまたは、人数が集まった場合その集まった高校で行われるチュートリアルに参加する(この場合大学が講師をその高校に送る)。両大学ともテストや宿題もその科目を取る大学一年生と同じように行う。ここで取った単位は、卒業後に引き続きその大学でコンピューターサイエンスを専攻する場合に修得済みの単位として大学で認定される。このようなコースは、大学にとっては生徒を獲得するために早めに動き出すことができ、学生にとっては将来のコース選びや大学選びに役立つなど、大学・学生双方にメリットがある。

NSW州大学は授業はオンラインで、チュートリアルは週に一度対面で行われるが、今期はコロナウイルスの影響でこのコースが中止になってしまった。シドニー大学はオンラインのみの授業なので、中止にはならないと予想される。

大学の授業料の変化

先日のニュースで、将来の求人市場において必要となるコースであるか否かによって大学の授業料を変えると政府が発表した。政府が将来の求人市場に需要があると予測しているのは、教育、看護、臨床心理学、英語、言語、数学、農業のコース。これらのコースは今までの授業料から46%〜62%下がり、年間3,700ドルになると提案した。また、サイエンス、ヘルス、アーキテクチャ、環境サイエンス、IT、工学は20%下がった7,700ドルに。反対に需要が少なくなると予測されている、人文科学、コミュニケーション・コースの授業料は今年の年間授業料の6,684ドルから2倍以上の14,500ドルとなる。法学や商業のコースは28%上がった14,500ドルに。既に大学で勉強している学生に影響はなく、来年から入る学生から影響する見込み。政府は今後、これらの将来的に求人需要の見込めるコースを専攻するように奨励していく。
https://www.smh.com.au/politics/federal/cost-of-priority-degrees-to-be-slashed-some-fees-to-soar-in-funding-overhaul-20200618-p553t5.html

失業者対策

ビジネス

コロナ禍の失業者対策

政府は大学、TAFE(公立の専門学校)などで失業者対策のための短期間のコースを、安価もしくは無料で提供し始めた。コースでは働くための知識を学ぶことができる。

■大学
政府はコロナウイルスの影響で失業した人が次の仕事に就くことをサポートしながら、就職のための学習がオンラインでできるコースを補助している。受講者が支払う受講料は1,250ドル~2,500ドルで 、期間は6か月。コースは全て、大学や高等学校以上の教育機関からオンラインで提供される。補助の対象コースは国が優先と決めたエリアで、教育、ヘルス、アーキテクチャ、サイエンス、工学、IT、環境学、メディカルサイエンスなど。
提供されているコースの一覧:https://courseseeker.edu.au/courses

■TAFE
アドミニストレーションスキル、デジタルスキル、ヘルス・メディカル知識、リーダーシップスキル、ビジネススキルのようなコースを無料で提供している。1人につき2つのコースを無料で受講できる。
https://www.tafensw.edu.au/fee-free-short-courses#browse-our-fee-free*-online-short-courses-currently-available

TAFEのコースは無料なのが魅力だが、オーストラリア政府が定めている難しさなどを表す学習レベル(Australian Qualifications Framework)が大学のコースと比べると低い。また、政府が補助している大学でのコースで修得した単位は、その後引き続き大学の学位を終了するときの一部にすることができる。

※掲載している内容は2020年6月現在のものです。

宮内由紀子さん

宮内 由紀子 さん

Aimtech ディレクター

学士号Queensland University of Technology(クィーンズランド工科大学)、Bachelor of Business - Marketing(ビジネス学部 マーケティング専攻)

修士号Queensland University of Technology(クィーンズランド工科大学)、Master of Business - Marketing Management(経営学修士号 ビジネス マーケティング)

博士号University of Southern Queensland(サザーンクィーンズランド大学)、Doctor of Philosophy - Business Marketing(博士号 ビジネス マーケティング)