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フランスのオンライン教育事情、コロナ禍から見えた準備と対応(前編)

2020年11月16日教育コラム

コロナウイルス感染拡大のイメージ

2020年秋現在、新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない状況が続いています。このコロナ禍で、日本以外の国の学校はどのような対策や工夫をしているのでしょうか。

今回はフランスのオンライン教育の現状について、フランスで3人のお子さんを育てている竹下純子さんに教えていただきました。

前編では、幼稚園から高校までのリアルな教育事情について解説していただいています。

コロナ生活でのオンライン教育事情

小学校でのオンライン教育

2020年3月17日にコロナ対応のため外出禁止令が出て、学校が閉鎖、ただし教育は遠隔で継続されることとなりました。フランスの学校は9月始まり6月終わりですので、まだ最後の学期で学習すべき内容がたくさん残っている状態でした。外出禁止期間中の遠隔授業の進め方については、各教師に委ねられ、教師のIT習熟度によってやり方も様々でした。同じ学校内でも先生によって内容も進め方も異なり、平等なオンライン教育の提供というのは難しいものであると感じました。

低学年を受け持つある先生は、毎日1時間程度ながら、対面授業に近い形でクラス全員参加のリアルタイムのオンライン授業を実施し、クラスメイトとのコミュニケーションの確保と学習へのモチベーションの維持に成功しました。最初のオンライン授業では我先にと一斉に発言する子供達に対処するのに苦慮する様子が見受けられましたが、翌日から生徒のマイクのオンオフを先生がコントロールする方式に切替え、スムーズに発言できるように改善されました。また、民間のフランス語学習サイトのアカウントが全員に配られ、外国人家庭の子供でも発音やヒアリングの授業に遅れることなくついていくことができました。

一方で、高学年を受け持つある先生はメールのみのコミュニケーションで、週末に時間割・課題・資料をPDFで配付、2日後に回答を配布、各自採点する形を取り、生徒の自主管理が重要となるクラスだと感じました。日本人家庭である我が家ではヒアリング用の音声データを先生にメールで送ってもらうなど、個別対応してもらうことが必要でした。このクラスではWhatsApp(チャットアプリケーション)を用いて親主導の連絡網が立ち上がり、補足資料の共有や疑問点の解決を行ったり、子供のビデオメッセージを共有して近況をやりとりしたりするなど、クラスメイトとのコミュニケーションの維持ができるよう工夫していました。

やり方は一様ではないものの、学年末まで教育を継続してもらえたのはありがたいことでした。ただ、親の在宅ワークや兄弟がいて家庭内の情報端末台数が限られていたり、親がつきっきりで学習をサポートできなかったりする場合には、補う方法が他になく学習に差がついてしまうと感じました。

自宅学習の期間中、必須アイテムとなったのが、プリンターでした。フランスの学校では教科書代わりの資料をノートに切り貼りしていく授業が多いので、スーパーでは用紙やインクが品切れになっているのもそれが理由だと推測されました。我が家では10年前の日本のプリンターを使っていたため、この機会に新たにプリンターを購入してしのぎました。

先生とのやりとりの様子の写真

先生とのやりとりの様子

板書をノートに写す様子の写真

板書をノートに写す様子

国のオンライン教育サポート(幼稚園から高校まで)

コロナ対応期間において、意外に良かったものとして発見されたことは、学校に加えて、国の義務教育用のデジタル教材がすぐに使える状態で整っていたことでした。国立遠隔教育センター(CNED)が作成した義務教育プログラムで、本来は海外子女や帰国子女、そして家庭事情から学校に通えない子供のために作成され、以前は紙ベースの通信教材だったものがデジタル化され整備されたものです。

CNEDのサイトでは、幼稚園から高校まで、科目毎の授業動画や音声、小テストを含むデジタル教材が教育要綱に沿った形で網羅的に提供されています。本来、有料で申込み受講するものですが、コロナ対応による学校閉鎖を受けて無料で開放されました。学校から配布されたアカウントを使ってすぐにアクセスすることができました。

加えて、国営テレビでは算数とフランス語の教育番組の配信が開始されました。教室さながらに、黒板をバックにした先生による授業が、朝から学年順に放送され、親としても対象学年の学校の授業をみられることは、授業参観がないフランスにおいて貴重な体験でもありました。

フランスの教科書・教材の特徴

ノート

フランスの公立学校の教育においては、同じ学年全員が使用する検定教科書のようなものがありません。教育要綱はありますが、それに沿って使う教材の選定は先生に任されています。教科書を選択するもの先生の自由、教科書を使うか使わないかの選択も先生の自由とされていて、実際には教科書を使う科目は非常に少ないです。私の子供たちの通う学校のクラスではほとんど教科書を使っていません(算数の教科書とドリル、フランス語文法のドリルなど、3-4冊程度)。

小学校「手作り教科書」の例(歴史)

教科書なしでどうするのかというと、先生が手持ちの資料からコピーしたプリントを生徒に配り、それを生徒がノートに切り貼りしていきます。必要に応じて、先生の板書や口述をノートに書き込み、アンダーラインを引いたりします。最後に先生がチェックし、つづりの間違いなどがあれば添削してくれます。こうして各自、オリジナルの「手作り教科書」ができあがっていきます。なお、教科書や本を使う場合には貸与制です。前の学年の子供達が使っていたものがお下がりで回ってきます。汚さないように各自透明なブックカバーをかけて使い、学年末に返却します。

このように、教科書がそもそも「手作り」である状況、特に教師により教え方が個別である状況の中、オンライン教育をどのように加えていくのか、どのように授業理解を補足するのか、標準的な教育が行き渡っている日本に比べると難しい課題があると感じます。

※掲載している内容は2020年11月現在のものです。

竹下純子さん

竹下 純子 さん

青山学院大学国際政治経済学部を卒業後、ベンチャーキャピタルおよびeラーニングの会社に勤務。

2009年よりフランス在住。

三兄弟の育児のかたわら、現地の小学生に日本の理科・社会を学ぶ機会を提供。 eラーニング関連の調査等も手がける。