フランスのオンライン教育事情、
コロナ禍から見えた準備と対応(後編)

2020.11.18 教育

前編 に引き続き、フランスのオンライン教育事情についてフランス在住の竹下純子さんにご執筆いただいた記事をお届けします。

後編では大学のオンライン教育事情と今後の教育体制について解説していただきました。

フランスの大学教育へのコロナの影響とオンライン授業

大学教育においてもコロナは大きく影響しました。特に、高校卒業資格試験であるバカロレア試験について、2020年は筆記試験を中止することとし、高校での成績表(内申点)に基づいて合否を決めることとなりました。合格発表が7月7日に行われ、合格率は91.5%で、前年の77.7%から大幅に上昇する結果となりました。

大学は3月~6月の間閉鎖され、その間の授業は全てオンライン授業で行われました。7月・8月の夏休み期間を経て、9月には多くの大学が新学期を迎え、キャンパスを開き、対面授業も可能な限り行われました。ただ、講堂も食堂も混み合うこととなり、開講に際しては多くの議論がなされた模様です。

大学の遠隔授業では、オンラインテストや課題の提出により単位取得できる制度となっています。授業の形式は、LMSの利用、動画による講座、チャットの利用、講義内容の資料のみ配付する講座、など、教授により様々です。ツールはZoom, Microsoft Teams, Moodle等種々利用されています。授業スタイルも画面上でスライドを共有しながら話す先生、タブレット上のホワイトボードアプリを使用して書く先生など多種多様です。

ヒアリングしたある大学教授によると、120人程の生徒を対象としたzoomによるオンライン講義を行っていて、授業中に学生が音声をONにして発言することは常に認めるスタイルとのこと。そして、講義と並行してチャットが立ち上がっており、教授はチャットには参加しないが学生同士で授業中のポイントを確認しあうことが行われているのを好ましく見ているようです。

ただ、オンラインでのテストの実施には問題もあり、たとえば、リアルタイムで記述式のオンラインテストを実施中、一部の生徒同士が携帯でやりとりをするケースもあり、真面目にテストに臨む生徒から批判の声があるなど、公平性の確保が難しいと感じたそうです。

オンライン授業への切り替え時には、そのための備品が急遽配布されたところもありました。カメラ、マイクに加え、タブレットを配布した大学もあったようです。プログラミングの演習ではコーディング用のソフトも配布されます。

感染者数の増加……第二期外出制限へ

9月、10月の間、フランス国内では感染者がじわじわと増加し、1日の感染者数が1万、2万、そして5万と指数関数的な増加曲線を描く中、ついにこの原稿を執筆中である2020年10月29日にマクロン大統領の演説により、第二回目の外出禁止が発令されました。ただし、今回は、幼稚園・小学校・中学校・高校は対面授業が行われることとなりました。大学は閉鎖され、再びオンライン教育がメインの体制となります。


※掲載している内容は2020年11月現在のものです。