名古屋文理大学様

「事例で学ぶOffice」を活用した反転授業

1.はじめに
パソコンの実習を大学で行う場合、個人差に悩まされます。個人差はすなわち経験の差によるところが大きく反映されます。特に、商業高校や工業高校出身者と普通科高校出身者では大きな隔たりがあります。
最近ではスマートフォンの影響か、パソコンをほとんど使ってきていない学生も多くなり、タイピングが苦手な学生も目立つようになりました。
名古屋文理大では1年次の必修科目で情報リテラシーというパソコンの実習があり、タイピングとOfficeツールの活用を中心に進めます。
学生の2人に1台の提示装置が設置された環境で、従来は教員が1つずつ操作手順を示しながら説明をしていました。
しかし、このような進め方は、退屈をする学生と、早すぎてつまずく学生にとって良い方法とはいえません。実際にアンケートで「教員と一緒に操作を進める形式の授業」について尋ねると、「ちょうど良い」は50%程度で、他の50%は「遅すぎる」もしくは「早すぎる」という結果でした。半数の学生が不満を持っていることを示しています。 そこで、WebClassで予習を課し、教員による説明は省略して、自分のペースで課題を行う反転授業の授業形式に変更しました。

2. 反転授業の導入・実践
名古屋文理大学では2011年よりiPadの配布を始めています。無線LANは全館に配備されています。WebClassはiPadに対応していますので、学内のどこでもコンテンツを開いて予習できる環境にあります。
2015年から、情報リテラシーでは、毎回「事例で学ぶOffice」で予習を課しました。教材の例として「事例で学ぶWord2013」の画面を以下に示します。


図1 例題(事例で学ぶWord2013第2章より)


図2 例題の解説(事例で学ぶWord2013第2章2節より)

教員による説明はすべて省略して、予習をしてきてある前提で課題を作成していきます。はじめの授業の予習率は半数程度でしたが、2回目以降は90%以上が予習をしてくるようになりました。はじめは学生も戸惑いがあったように思われますが、1度予習が定着すると、この進め方でスムーズに授業が進行します。
課題の作成中は、教員と学生の補助1名がサポートします。わからないことは挙手して質問します。授業中に終われない場合は1週間以内に提出します。また、早く終わった学生用に発展問題をいくつか準備しておきました。半年間、課題の提出率は毎回ほぼ100%でした。

3. 反転授業に対する反応
授業後のアンケートで、反転授業とそうでなかった前年度とを比較しました。
「実習を受講して定着した操作」について、受講者数に対する比率を図3に示します。


図3

反転授業を行った2015年のほうが、定着した(自身がついた)操作の率が高いことがわかります。これは操作を人に教わるのでなく、説明を自らe-Learning教材で学んで修得した結果と思われます。

次に、発展問題の提出数を表1に示します。

4. まとめ
「事例で学ぶOffice」シリーズを予習として反転授業を試みました。この教材は、例題を1つの目標(ゴール)として設定し、解説を読み進めながら課題を完成させるものです。学生は非常に集中して、かつスムーズに実習を行いました。予習は90%程度の学生が定着していました。
反転授業を経験した学生からは、「学習意欲が高まった」、「楽しかった」という回答が得られました。また、教材の評価として、「操作をイメージしやすい」、「デザインが見やすい」、「難易度は適切である」という意見が多く見られました。
今後は、さらに発展問題を工夫するなどして、より充実した実習を展開したいと考えています。

本文中に登場する『事例で学ぶOffice』シリーズは、今後内容を強化し『MOS試験学習教材』シリーズとしてリリースいたします。


※ 掲載内容は2016年10月現在のものです。